クリヨウジ

クリヨウジ

• "　1928年、福井県鯖江市に生まれた久里洋二は、上京し漫画家として活動を始めた。60年代から実験的なアニメーションを制作し、内外で高い評価を得る。ユーモアあふれる絵画やオブジェ、絵本なども発表し、日本を代表するマルチ・クリエーターとして活躍している。 　本作は、アクリル絵の具で描かれた絵画作品。のどかな田園風景をモチーフに、まるで夢の一コマのような、ありそうでありえない情景が巧みに創りだされている。水田が巨大な鏡面となり、全ての事物を双子に映す神秘的な世界。ハードな舞台設定にもかかわらず、直線を排してパースペクティヴをずらし、形の重複を避けることで、世界は柔らかさを失うことがない。リズミカルに配された木々は音符にも見え、背景の山々が合唱するような音楽的な楽しさもかもし出される。画面下部には一本の道が描かれるが、唯一、暖色・赤色系の絵の具が塗られたこの場所は、鏡の世界からの逃走路であろうか。犬のような動物がアニメーションの手法で登場し、鏡面仕上げの球体から動物へと変身し駆け抜ける。 　イタズラ心とユーモアを緻密な計算で作品化する久里洋二。彼が構想する大冒険への静かな序章のようにも感じられてくる。"

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