所蔵作品

大沼静巌

大沼静巌
  • " 大沼静巌は、同じ三国町出身の新道繁らと共に、中央画壇で活躍した本県作家の代表的な一人である。 大沼は明治32年三国町加戸のお寺(実明寺)に生まれ、大正8年に北陸中学校(北陸高の前身)を卒業した。翌年上京して、太平洋画研究所で、中村不折や石川寅治などに師事した。昭和5年、31才の時第11回帝展に「造船所風景」で初入選を果たし翌12回展にも「少女二人」が入選しさらに13回展では「母子五人」を出品して連続入選を成し遂げた。洋画界の登竜門ともいえる帝展への連続入選によって、大沼は画家として一段と自信を深めたものと思われる。その後も太平洋画会の会員として制作を続け、新文展・日展にも入選している。  戦後になると、昭和22年10月に、太平洋画会から脱退したメンバー30人により示現会が創立されたが、大沼はその一員として加わった。示現界はその後、具象絵画の一大勢力として、わが国洋画界に君臨している。着々と力を蓄えてきた大沼は、昭和27年の第8回日展に「鳩と仁王門」で特選をとり合わせて朝倉賞も獲得した。こうして洋画界の第一線に踊り出て、昭和38年には日展会員、42年・48年には日展審査員となっている。また示現会の専務理事として後進の育成にもあたり、わが国洋画界の発展に貢献してきた。  晩年の大沼の作品は、鳥をはじめとする動物を描いたものが多く「森の梟」「漁村」(三十回記念示現展)「雪後」などがある。帝展に初入選して以来、一貫して具象絵画にと取り組み、独自の世界を確立させてきたが、昭和58年12月84歳で病没した。  この作品「海浜」は昭和51年4月大沼が77歳のときの作であるが、独特の荒いタッチと渋い落ち着いた色彩で漁村の網干し場に憩うトビの姿を描いている。決して華やかさはなく、むしろ暗さのある、東洋画に通ずる自然観照が見られる。うら寂しい日本海岸の漁村風景の中に、トビの姿がとけ込み、重厚な画面を構成している。77歳という年齢を感じさせない力強い作品である。大沼の作品は、動物を描いていながらも、それがバックの風景と一体になっており、自然の一部として動物をとりあげている。彼が仏門に生まれたということが、こうした鋭い感性をはぐくみ、独自の絵画間を大成させたのかも知れない。"

1899-1983

オオヌマジョウゴン

Jogon ONUMA

O-54

海浜

カイヒン


制作年:1976
サイズ:97×130.3cm
技 法:油彩
材 質:キャンバス
形 状: