所蔵作品

中村徳三郎

中村徳三郎
  • "  県立美術館には、次のような中村徳三郎の作品が収蔵されている。 「堕ちた鳥」(昭和35年作) 「あれじのぎく」(昭和51年作) 「緑色の函の静物」(昭和53年) 「魚拓の静物」(昭和45年)  中村徳三郎の作品には、静物を題材にしたものが多い。静物といえば、花や果物や身辺の器物を対象に描く作品のことをさす。中村徳三郎の作品にも花や果物も登場するのだがどこかそれらのものは、この世のものではないような、白昼夢の世界を感じさせるものがある。身辺のものでありながら、生活のにおいがしない。ありふれたものでありながら、日常の世界とは異なる異次元の世界を感じさせる一種独特の雰囲気を漂わせている。  中村徳三郎は知的な画家である。感情赴くまま一気に絵筆をふるって製作するタイプの作家ではない。その作風は、師の岡鹿之助や後期印象派の画家スーラなどと同じ点描という技法を用いておりアトリエの中で一点一点を画面につみかさねる描法である。  この「魚拓の静物」には、鮭とおぼしき魚の拓本、折りたたみ式の魚の絵の入ったカード、魚釣りの毛ばりが三本、貝殻二個と貝の蓋一つ。そしてタツノオトシゴなどが封入された文鎮が描かれている。海に関係のあるものばかりを構成したこの作は、詩情あふれる不思議な超現実的な世界を表現している。点描による色彩は明るく、端正な構図は気品があり、清潔な印象を与え静かで温和である。  中村徳三郎は、大正二年武生に生まれた。生家は「一献の春」の銘柄で知られている酒造業を営んでいる。旧制武生中学を昭和五年に卒業。当時同校には図画の教師として森由太郎がおり、また英語を教える傍ら絵筆をとる馬越祐一がいた。そして武蔵野美大の前身である帝国美術学校洋画科に進み 昭和9年同校を卒業した。卒業後しばらくは独立展や二科展、日展に出品していたが昭23年に春陽会展に初出品して春陽会賞を受賞。昭和26年には会員にむかえられ、以後同展に出品を続けて現在に至っている。また日本国際美術展に招待されて出品するなど、その落ち着いて温和で知的な作風は高く評価されている。"

1913-1997

ナカムラトクサブロウ

Tokusaburo NAKAMURA

O-50

魚拓の静物

ギョタクノセイブツ


制作年:1971
サイズ:60.6×72.7cm
技 法:油彩
材 質:キャンバス
形 状: