野々村 仁清
野々村 仁清
- " 本作は京焼の祖といわれ、近世を代表する陶工・野々村仁清の作とされる色絵茶壺である。これまで図版でのみ存在を知られながら、一般に公開されることはなかった。
形状は肩に四つ耳を付けた肩衝茶入形で、裾部分を残してやわらかな白濁釉を掛け、その上に黒と飴色の成牛2頭、黒の子牛1頭が狩野派風の画風で描かれている。黒牛は輪郭線を白抜きにして黒絵具を塗り重ね、その上から薄く紫を掛けている。一方飴牛は輪郭を濃い茶線で引き、薄茶色を塗りこめる。そして蹄と角、目、飴牛の鼻先を青色とし、角先には金銀彩(成牛は銀、子牛は金)を施す。また余白には下草や一叢の芒が、薄緑の線描で表されている。
総じて落ち着いた表現がなされており、他の茶壺のような赤や黒、金銀をふんだんに用いた華麗な装飾性は見られない。また牛を題材とする点も珍しく、類似のものでは「色絵烏図茶壺」(米国・アジアソサエティ蔵)や、「色絵龍図茶壺」(個人蔵)が知られるのみである。平底左端中央には他の作例同様、大印と呼ばれる「仁清」印が捺されている。
茶碗・水指・香合・香炉など、茶道具を中心とする多種多様な作品を制作した仁清であるが、そのうち特に声価の高いものが色絵茶壺である。「色絵藤花図茶壺」(国宝、MOA美術館蔵)を筆頭に、本作を含め12点、銹絵や信楽写ら無文のものを加えると計15点の存在が報告されている。なかでも本作の器形や画題、余白を広くとる画面構成、そして色数や金彩を抑えた彩色手法などは「色絵烏図茶壺」と近く、そこから本作も一連の茶壺の一つとして、仁清により制作されたものと考えられる。
仁清茶壺の編年については未だ不明な点も多い。その意味で未公開の本作が本館に収蔵されることにより、その位置付けも含め、今後の仁清研究の進展が期待できる一点として貴重といえる。
本作の古い伝来は定かでないが、大正10年(1921)11月に京都で開催された「東山大茶会」に、藤田耕雪(大阪の実業家、本名徳二郎、藤田伝三郎次男)が「仁清四つ耳、牛の絵茶壺」を出品したことが報告されている。また現所蔵者によれば、以前の所有者は財閥関係者であったということから、本作がそれに該当する可能性が考えられる。
"
-
ノノムラ ニンセイ
Ninsei NONOMURA
H-121
色絵牛図茶壺
イロエウシズチャツボ
Tea leaf Jar with Oxen in overglaze enamels.
制作年:17世紀
サイズ:口径9.8 胴径20.0 底径10.4 高24.4㎝
技 法:
材 質:陶器
形 状: