牧野信之助
牧野信之助
- "唯今ハ状袋沢山ニ御惠送下されあり可たく存候こちらへ
持参のものも恰度無くなり候ところへ誠ニあり可たく存候
長官その他へも少々春そわけいたし度候 次ニ承ハリ候
ヘバ又々御同業者紛争の赴(ママ)五箇人ほど早くより
廣みに出でたる商人がいつも結束のむつかしきハ不可解ニ
御座候 それ〴〵の苦情ハよくわかり可ね候へどもあなたの
方としてハ殊ニ此際ハ可成沈黙を守られ眼光を広く
これ迄名声を舉げられたる本領即ち日本紙の研究
を專念可けねなしに御つゞけ相成父子相傳へて更
らに天下を驚仰セしむべき功績を擧げられたく切望
仕候五箇としてハ勿論組合の成立ハ今頃遅き程に
必要なるハ知れ切つたことに候へ共誤解より生じて商人
等が騒ぎ出したと春れバそこへ理屈を云ふてもわか
るまじく今しばらく沈静を待たれ當局に一任して
あなたの方ハ誠心誠意天職を專らにセらるゝが策
の待たるもの可と存じ候 横山、内藤先生等の望ゼ
られてゐるのもこの点かと存じ候あなたの一拳一動
に何か利得があるかと疑ひを持つやうな商人達に
封してハ努めて無抵抗主義に技能の薀奥をみがゝ
る方面に御尽力が<第>一のことゝ存じ候 過日上田君も
大滝に二つの相反セる空気があるやうのことを申され
それにつきいろゝゝ意見を述べられ候處小生ハ前
よりよく承知セることにて何卆此際殊に御自重
相成努めて可ゝる空気を緩和セらるゝやう祈上候
終りニ神社記録ハ貴家個人のものとして岩野家に
傳へらるゝものとして小生の意見も遠慮なく加筆
申上たく候猶小生も郷里の<歴>(ママ)史を少し研究春る
用件も有之この八九月ニハ十日ば可り帰省のつもりニ
御座候いづれ拝顔旁々申上たく
草々
五月一日 札幌ニて
牧の
岩野老臺
※旧字体には< >を付けました"
1884/4-Sep-39
マキノシンノスケ
Shinnosuke MAKINO
C-38-585
牧野信之助書簡 封筒落掌の謝辞・紙漉職人組合設立につき村内の紛争を憂う 154‐14
Letter from Shinnosuke MAKINO
制作年:1932年5月1日
サイズ:便箋3枚22×18 封筒20.7×8.5
技 法:紙本墨書
材 質:紙 墨
形 状:便箋3 封筒1