川端龍子
川端龍子
- "啓上
陽春之砌益々御繁昌の
事大慶尓存し上けま春
さて過日御漉き願ひ上けました
麻紙の儀に就いては、御送付を
受けました節に一見紙面の滑
か過ぎる事可゛気に成つて居り
ました可゛昨日始めて試みました
處矢張りその点にて、恰も江戸
川巻紙に書く感じにてぽつてり
とした麻紙の気分に欠くる事
に御座いました。
元論(ママ)日新に良き御製造法
と御考慮のことゝ存し上げま春可゛
小生等に於ては以前の何れかと
云へば野趣に富んだ紙質の儀
可゛好感を持てる事に有之、あゝ
したもの可゛何故に出来ないもの
(かの:見え消し)かの落膽に御座いま春
紙面もあゝ平滑にロールをかけた
やうでハ小生の如きざんぐりしたもの
を制作致さうとするものには筆が
走り過ぎて困ることに御座いま春
一般に筆の不自由なものには、皆
以前のあらい感じの紙質を希望
致し居る事も御製法の御考
慮に御入れ願度き事に御座いま春
些か差出かましくとも存しま春
なれど、自分制作の上の気分の
上よりの麻紙に就いての卒直
な意見まで申上けました次第平
に御海容願上けま春
四月一日 川端龍子
岩野平三郎様
"
1885-1966
カワバタリュウシ
Ryushi KAWABATA
C-38-135
川端龍子書簡 麻紙に対する所見、平滑な紙面よりあらい感じの紙質を求む 50‐4
Letter from Ryushi KAWABATA (1885-1966)
制作年:1931年4月1日
サイズ:便箋5枚23×13 封筒21.2×7.6
技 法:紙本墨書
材 質:紙 墨
形 状:便箋5 封筒1