北川健次
北川健次
- 北川健次は、本県出身の美術家として、近年最も高い評価を得る作家の一人であるだけでなく、現代日本版画界を代表する作家と言える。版画の他にオブジェ、コラージュ、油彩画、写真、詩、評論も手がけ、鋭い詩的感性と卓越した意匠性を駆使した作品は美術の分野において独自の位置を占めている。北川は、20歳代前半より写真製版による銅版画の技法を開拓し注目されたが、若くしてあまりに完成度の高い作品世界に到達したためか、程なく版画制作から遠ざかる。そうした表現の危機を脱し、現在につながる新たな世界へと導いたのは、オブジェという手法の発見であった。限定された空間を劇場に見立て、既成の映像や物体を鋭い詩的感性により自在に呼び寄せ結び合わせることで、濃密なイメージを醸成するオブジェ作品は、引用、虚構といった北川の創作原理の原器としてことさら重要である。本作では、卑近な物体に最小限の手を加えることで、硬質かつ緊張感にあふれた客体を創出しており、北川の数少ない非イメージ的なオブジェの成功例として貴重である。視覚的というより、触覚的ともいえる作風は、当館が既に所蔵する北川のオブジェ作品とは表現の質がまた異なり、作家の世界観をより多面的に照射するために有益である。加納光於より激賞されたことで作家本人の愛着もひときわ強い作品である。
1952-
キタガワケンジ
Kenji KITAGAWA
M-42
黒のオブジェ-あるいは停止するフランツ
クロノオブジェ-アルイハテイシスルフランツ
Black Object - Standing Franz
制作年:1998年
サイズ:30×115.3×30
技 法:オブジェ、ミクストメディア
材 質:
形 状:アクリル装