所蔵作品

鈴木千久馬

鈴木千久馬
  • " ゆったりとした白いソファーの上に、扇を手に裸婦が横たわっている。その姿は、かすかなバラ色に染まりながら、白色の世界と一体化している。前景にはバラの花束が置かれ、白一色の世界に黄と青とピンクのアクセントを付けている。  鈴木千久馬の白を基調にした描写は、独自の趣を持ったもので、本作は晩年の様式を代表するものといえる。そこには、東洋の幽玄に通じる淡白な表情と、油彩のもつねばり強さとが一体となり、日本人ならではの美意識が表れている。   千久馬は日本の油彩を希求し続けた数少ない画家の一人である。それは単純に日本的画題を取ることによって日本の油絵が打ちたてられるという甘い考えではない。あるものはモデルに和服を着けさせ、あるいは日本の神話に題材を求めることによって、自己の矛盾を解決しようとした。しかし、それは西洋人が好んでやるエキゾチシズム(異国趣味)ないしはオリエンタリズム(東方趣味)の写し替えにしかすぎず、真の意味で日本の油彩を希求する者の姿とはいいがたい。  千久馬の描く題材には、意識的に日本の文化を誇張しようというものはなく、むしろ西洋的なものがほとんどといってよい。しかし、そうしたものを通してにじみ出てくる日本的感性に、われわれは彼の目指した本領を認めることができそうである。確かに、それは彼の出発点となったフォーヴィスムが、やがて日本に定着する過程で和風化してゆく歴史の流れ対応しているかに見える。しかし、そういった流れに同調せずに、仲間と袂を分かち、自己の道を切り開いていった勇者でもあったのである。  初期に描かれたブラマンク張りの黒っぽい色調は晩年にゆきついたこの「白」の世界はと好対照を示しており、前者が西洋から学ぼうとする貪欲な目が見られ、後者にはすべてのものを捨て全く自由に遊ぼうとする余裕が見られる。"

1894-1980

スズキチクマ

Chikuma SUZUKI

O-3

横臥裸婦

オウガラフ


制作年:1976
サイズ:80.3×130.3cm
技 法:油彩
材 質:キャンバス
形 状: