所蔵作品

木村盛和

木村盛和
  • "ゆるやかな丸みをもつ茶碗で、高台とその周辺をのぞいてかけられた天目釉の表面には油の雫になぞらえて油滴と呼ばれる小さな銀色の斑点が光り輝いている。これは釉薬に含まれる酸化鉄が定着して現れる現象と考えられており、古来からまれなものとして評価が高い。見込みに木の葉が表されているが、このような作品は南宋時代の「木葉天目碗」(大阪市立東洋陶磁美術館)が著名であり、古くより日本において鑑賞されてきたが、その制作方法については諸説あり、実態は不明な点が多い。そうした中で作者はその復元に長年にわたり取り組んできた。葉を茶碗に置いて焼くとき、木の葉の収縮は4分の1~5分の1と大きいため大きな葉を使わなくてはならないのだが、その収縮によって焼成中に丸まってしまうことも多い。しかしこの作品は葉がきれいに灰化し、葉脈だけが美しく残っており、また鉄釉による油滴が効果的である。 木村盛和は中国宋時代に焼かれた天目茶碗における技法の現代的なアレンジを目指し、中国の技法を真似るだけではなく独自の表現を探り続けている。作陶を始めた昭和12年から商工省所管国立陶磁器試験所の職員として、鉄釉(天目釉)の調査を行う際にも、記録文献もないまま各地の鉄を含む天然の岩石や鉱物を自ら採取・調査し、日本における鉄釉の可能性を探り、焼き方の工夫を重ねてきた。本作品はそうしたなかで生み出された作品で、作者が得意とする鉄釉の作品の一つとして特徴がよくあらわれた作品といえよう。"

1921-2015

キムラモリカズ

Morikazu KIMURA

H-63

油滴木ノ葉釉茶盌

ユテキキコノハユウチャワン


制作年:20世紀
サイズ:口径13.7 底5.5 高6.5
技 法:
材 質:陶器
形 状: