所蔵作品

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虎図押絵貼屏風


制作年:19世紀
サイズ:各縦134.6 横50.8㎝
技 法:紙本墨画淡彩
材 質:
形 状:屏風装 6曲1双


"さまざまな姿態の虎に、松や竹、岩などを添えて12図に描き分け、6曲1双の押絵貼屏風にした作品。いずれも水墨を主体に一部淡彩を加えて描かれ、虎の体部には緻密な毛描きも施されている。 各図には江戸後期の京都画壇で活躍、岸派の祖となった岸駒(1749~1838)の落款・印章が認められるが、画風もとより落款も本人のものとは異なる。ただし虎の表現やポーズなどには岸駒の影響が認められることから、岸駒ないし岸派の作品を粉本として制作されたものと考えられる。また画中における落款の位置がバランスを欠いていることから、本来無款の作品を岸駒の作とすべく、のちに落款を入れたものと推測される。 一方、本図は木津成助「深山遊虎の図」(福井市立郷土歴史博物館蔵)と共通する表現が認められることは注目される。木津成助(1782~1853)は今立郡粟田部(現越前市粟田部)の素封家。敦賀の山本九郎右衛門の子で今立の木津次左衛門の養子となる。岸駒の後援者として深い親交を持ち、また彼に師事して自ら絵を能くしたことでも知られる。文政9年(1826)に岸駒と合作(京都清水寺石製常夜灯刻画下図)しており、また文化12年(1815)には越前の地誌『越前国名蹟考』の挿絵を描いたことも知られる。ほかに子孫の家に数点ほどの作品が伝わるのみで、残された作例は多くない。 岸駒の後入れ落款を有するものの、上記「深山遊虎の図」と共通する表現を持つ本図は、同じく木津成助の筆と見て大過ない。ただし、木津家伝来の作品が概ね粗い筆致で描かれるのに対し、本図のような緻密な表現は上記福井市博の作品以外知られていない。そのため本図の位置付けについては今後の検討が必要となる。 本図は木津成助や江戸後期の越前における美術動向を考える上で貴重である。"